老舗サウナが幕を閉じます。

横須賀にあるサウナトーホーさんが明日(2020年9月11日)午前9時をもって44年の歴史に幕を閉じます。


実はこのお店は私にとっては大変思い出深いお店です。

44年の間に二度大きな改修工事をされたのですが、その二度とも私が担当させて頂きました。

昭和60年(1985年)、当時27歳だった私は名古屋にあるパチンコ・サウナ専門の設計事務所に勤めておりました。
そんな時一度目の大改修工事が計画され、当時の事務所社長のT先生にいきなり「この現場、お前がやれ」と言われ、基本計画とデザインはその先生自身がお考えになり、実際の図面作成や現場監理は私が担当することになりました。
うれしい反面経験の少ない私にとっては不安の方が大きく、毎回ドキドキしながら横須賀の現場に通ったのを覚えています。
その頃はまだ温浴施設の設計はもちろん、監理にも不慣れで現場でもわからないことが多く、当時の事務所の先輩や現場所長にずいぶん助けていただいたことを思い出します。

その後この施設は無事オープンし、当時の関東では珍しい運営形態でたくさんの方に支持される施設になったのですが、この大改修から14年後二度目の改修工事の計画が持ち上がりました。
その時すでに私は独立していたのですが、その改修工事も私の方で担当させて頂くことができました。

それから21年が過ぎ、その施設が閉店すると聞いて先日久しぶりに行ってまいりました。
建物の外観、エントランス、浴室、レストラン、休憩ゾーンetc.
それらはほとんど老朽化も少なく二度目の改修工事のままの状態を維持されており、これまできちんとメンテナンスされていた施設に感動いたしました。

そんな施設を利用しながら改めてゆっくり廻りを見渡すと、35年前改修前のこの施設に初めて現調で訪れた時の事や、工事中の様々な思い出がよみがえってきました。
たまたま歳が同じだった施主様側担当者の方(現在は部長になられてます)と機械室や天井裏隅々まで見て廻ったたこと。
工事中は毎週泊りで監理に来ていましたが、そのたびに毎回横須賀の飲み屋街を案内してくれた酒好きな現場所長。
先生に言われた指定色の塗装範囲を間違えて伝えて、設計検査の時に叱られてしまったこと。
照明ボックスの中を白く塗ってほしいと現場で塗装屋さんにお願いしたら、後の完成パーティーの席で「こいつ、若いのによく現場を知ってると思ったよ」と、真っ黒でくしゃくしゃの顔した親方に褒めれれたこと。等々
もう忘れかけていた当時のことが昨日の事のように思い出されてきました。
二度目の改修工事の際もたくさんの思い出はあるのですが、やはりなにかも不安で初めてのことが多かった一度目の工事のことが一番思い出されます。

最後に、オーナーであるO社長ともお会いすることができ「とても懐かしい人が来てくれた」と忙しい時間を割いて当時のお話をしてくださいました。
その中で一番印象に残った言葉は「あなたの先生が持ってきてくれた図面を見た時、一目見て『あーこのプランが欲しい』と心から思ったよ」という言葉です。
その先生を師事しその後独立して今があるのですが、果たして自分はこれまでそんな素晴らしいプランを作ることことができていただろうか?
もっともっと魅力あるプランを考えなけえればいけない、という事を改めて気づかせて頂いたお言葉でした。

サウナトーホーの皆様、長い間本当にお疲れさまでした。
そしてありがとうございました。